商品の代金が支払われない!?売掛金を回収する方法について

債権回収のススメ」では、将来的に売掛金の支払などがされない場合の債権回収方法として、「担保をとっておく」ことを紹介しました。
この時ご紹介した担保は、保証人や保証金、所有権留保など、取引をする前に、取引先や保証人との契約によって設定するものでした。

しかし、担保をとって商品の納入先から売掛金の支払いを受けられるようにしたくても、その取引先が合意してくれるとは限りませんし、言い出すこと自体が憚られることもあるでしょう。

そこで今回は、一定の関係性にあれば、取引先と担保を設定する契約を締結することなく発生する担保権(法定担保権)である、「動産売買先取特権」による売掛金回収を紹介します。

目次

動産売買先取特権とは?

動産売買先取特権とは、動産を納入した売主に、納入を受けた買主である取引先が売買代金を支払わない場合に、その動産を差し押さえて、競売手続きによって回収を図ることができる法定担保権です。

動産売買先取特権を行使する方法

動産売買先取特権を行使して、競売手続による回収を図る方法は3つあります。

①売主が執行官にその動産を提出して競売手続きを申し立てる方法

②売主が執行官に、その動産を占有している占有者が「差押を承諾することを証する文書」を提出して競売手続きを申し立てる方法

③売主が執行官に「担保権の存在を証する文書」を提出して、担保権についての動産競売の開始を許可する決定を得て、競売手続きを申し立てる方法

①は、売主が一度納入した動産を持っているという場面は考えにくいですし、(売買契約を解除して納入した動産を引き上げることができる場合は別ですが、その場合はすでに納入商品を回収することによって、目的を果たしています。)

②は、大抵の場合、この占有者こそ売買代金を支払わない取引先であり、差押されることを承諾することは期待できません。

そのため、執行官が買主側に赴いて調査し、その動産が存在することを確認できれば差押を実行できる③の方法が現実的と言えます。ただ、③の方法も、その動産を特定しやすい場合は良いのですが、同種の商品が倉庫に大量にあるなど、その動産であることを特定することができない場合には、行使することができないという難点もあります。

納入商品が転売された! そんなときの動産売買先取特権の活用方法

買主が卸売業者や商社、販売店であるなど、売主が納入したその動産を転売している場合には、買主が転売先に対して持つ売掛金債権からの回収をする(物上代位する)方法があります。

転売先に対する売掛金債権から回収を図る方法には、動産売買先取特権以外にも、売買代金売掛債権を被保全債権として、転売売掛債権を仮差押えする方法もあります。

ただ、この方法は、仮差押えを受けても買主が任意に払わない場合には、さらに訴訟や強制執行手続を経て回収しなければなりません。
また、仮差押命令を得るには保証金を用意する必要もあります。

一方、動産売買先取特権は、差押の申立をして、差押命令が発令されれば、転売売掛債権に物上代位して転売先から直接回収することができるため、機動的です。


転売売掛債権への物上代位のポイント

この差押の申立では、売主が、裁判所に対して

①「担保権の存在を証する文書等」を提出して、動産売買先取特権の存在を証明すること
②転売売掛債権を特定すること


が必要です。

①は、「担保権の存在を証する文書等」が必要です。
たとえば、売主と買主の間で交わされた、売買契約書、発注書、請書、納品書、納品受領書、請求書などが必要になります。

ちなみに、必ずしも文書自体が書面の形態でなくとも、ファクシミリ文書や電子メールのプリントアウトであっても問題ありません。

なお、このような文書が無いという場合には、売主・買主間における電子メールのやり取りやメモなどから証明を試みることも考えられます。

②は、売主の売買売掛債権の対象となっているその動産が、買主の転売売掛債権のどの取引にあたるのかの特定です。
売主が納品したその動産が転売された動産であると特定することができれば認められやすいといえます。

買主の指定で売主が転売先に直接納品しているような場合は、転売先が発行する納品受領書や、運送会社が発行する運送したことを証する書類などによって、転売されたその動産、これにかかる転売売掛債権の特定はしやすいでしょう。

このような転売先への直接納品ではない場合は、特定の為には転売先の協力が必要になることが多いように思われます。

動産売買先取特権で転売売掛債権へ物上代位する際の注意点

動産売買先取特権による転売売掛債権への物上代位は、次の場合にはできないので、弁済期が到来したら迅速に動くことが重要です。

①売買売掛債権の弁済期が到来していない場合
②転売売掛債権が買主に既に支払われている場合

売掛金回収は弁護士にご依頼を

売掛金回収には、ご紹介した動産売買先取特権はもちろん、様々な法的手段が考えられます。

どのような手段が最適か、どのような準備をすればいいのかは専門的で手間もかかりますので、債権回収を取り扱っている弁護士にご相談されることをお勧めします。

お問い合わせはこちらから。

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