職場復帰支援の適切な対応とは?

メンタルヘルス不調によって休職していた労働者が職場に復帰する際の職場復帰支援について、使用者側がすべき適切な対応を紹介いたします。

目次

職場復帰支援とは

1.メンタルヘルスに対する適切な対応の必要性

仕事やプライベートでの強い不安・ストレスによって心の健康に不調が生じ(メンタルヘルス不調)、労働者が休職等をせざるを得ない場合があります。

そして、使用者は、労働者の心身の健康に配慮し、職場環境を整える安全配慮義務(労働契約法5条)を負っていますので、心の不調を理由に休職等をした労働者に対しても、「適切な対応」をしない場合には、上記安全配慮義務に違反するとして法的責任を負うおそれがあります。

そこで、「適切な対応」とはどのようなことをすれば良いのかいうことになりますが、この点については、厚生労働省及び独立行政法人労働者健康安全機構が公開する『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』が参考となります。

『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』
(出典:厚生労働省ホームページ)

2.職場復帰支援プログラム

心の不調を理由に労働者が休職した後、当該労働者が職場復帰する際には、使用者側における事前準備として、職場復帰支援プログラムの策定や関連規定の整備等を行い、休業から復職までの流れをあらかじめ明確にしておくことが必要とされています。

『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』では、労働者が心の不調により休業をしてから、復職までの具体的なステップが紹介されています。

<第1ステップ>病気休業開始及び休業中のケア
従業員側から診断書が提出されることにより、休業が開始されることが通常かと思います。
この時点で、会社側としては、病気休業中に労働者が安心して療養に専念できるような配慮、情報提供等を行う必要があります。

・労災の有無、傷病手当金制度等に関する利用方法の説明等
・休職等を利用できる最長期間の説明
・必要と見込まれる療養期間の聴き取り
・不安や、悩みに関する相談先の紹介

<第2ステップ> 主治医による職場復帰可能の判断
主治医による職場復帰可能の判断がなされた後、当該判断が記載された診断書を会社に対して提出してもらうことになります。

もっとも、主治医による診断書の内容は、労働者側の回復状況だけを診察して判断がなされており、実際に職場で必要とされる業務遂行能力に達しているか否かの判断ができていないこともあります。

そのような場合には、労働者の了解を取った上で、主治医に対して職種や業務内容についての情報を提供し、実際に職場で必要とされる業務遂行能力に達しているかの判断をしてもらうことも一つの方策となります。

<第3ステップ> 職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成
①情報の収集と評価
➡職場復帰の可否については、次のような情報を収集し、評価をする必要があります。
・労働者の職場復帰に対する意思の確認
・産業医等による主治医からの意見収集(労働者の同意を得た上で)
・労働者の状態等の評価(今後の通院治療の必要性、休業中の生活状況)
・職場環境等の評価(業務負荷の程度や、支援準備の可否等)

②職場復帰の可否についての判断
収集した情報をもとに、職場復帰が可能かについて、会社側にて判断をします。

③職場復帰支援プランの作成
➡職場復帰が可能と判断された場合、以下のような「職場復帰支援プラン」を作成します。
・職場復帰日の決定
・業務量の変更、治療上の配慮の必要性、業務サポートの具体的内容・方法等の確認
・配置転換、移動の必要性
・産業医等による医学的見地からの意見
・フォローアップの方法
・試し出勤制度の利用の有無等

<第4ステップ> 最終的な職場復帰の決定
第1~3ステップを踏まえて、最終的な職場復帰の決定を行います。

<<<職場復帰>>>

<第5ステップ> 職場復帰後のフォローアップ
たとえ、「職場復帰支援プラン」に沿って職場復帰をしたとしても、実際には様々な事情から、当初の計画通りに職場復帰が進まないことも多々ありますので、適宜「職場復帰支援プラン」の確認・見直し等のフォローアップが必要となります。

・治療状況の確認
・勤務状況、業務遂行能力の確認
・職場環境等の確認
・上司、同僚等からの聴き取り(一緒に働く人たちにとっても過度の負担がかかっていないか)

以上が、職場復帰支援の手順となりますが、心の問題については専門的知識が必要となる場面も多く、対応を間違えてしまうと、再療養をせざるを得なくなってしまうケースや、時には会社側が法的責任を負う可能性もあります。

また、職場復帰支援の際には、労働者のプライバシーに配慮(同意書等の取得)が必要であったり、産業医と主治医の判断が分かれた場合の対処方法等、様々な問題が存在します。
→主治医と産業医の診断の違いについては、こちらのブログをご覧ください。

その際は、各弁護士ともに官庁・企業における豊富な実務経験を有するUtops法律事務所にご相談ください。

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