新年明け初回のブログということで、今回はスタートアップにとって朗報となる「経営者保証改革プログラム」についてお話ししたいと思います。
経営者保証改革プログラム導入の背景
新しく会社を設立し事業を始める際には金融機関で資金調達をするケースがほとんどです。
そして、これまでは金融機関で借入をする際には経営者の保証が必須となっていました。
つまり会社と経営者とは一蓮托生で、事業が失敗し会社が破綻すれば、経営者も破綻するしかないのが通常でした。
経営者は事業によって得た会社の財産だけではなく、個人として形成した預金、家などの不動産、車、株式など全ての財産を会社の負債に当てなくてはなりません。
せっかく意気込みを持ってスタートアップし、雇用を生み出し、社会に利益をもたらしてきたのに、事業が一度つまずいてしまうと、また裸一貫から始めなくてはいけません。
こういった現状が、新興企業の育成や経営者の再生の足かせとなっているということで、「経営者保証改革プログラム」が策定され、今年(2023年)3月から経営者保証が不要になる新興企業向けの融資制度が始まります。
さらに4月からは民間金融機関が安易に保証をとる悪しき慣行も是正されます。
金融機関に対して、経営者保証をつける場合にその必要性について説明義務を課すというものです。
金融機関は今まで自動的に経営者保証をつけていたところを、事業の内容や形態などの事業性や経営者の能力などをしっかりと検討して、融資の判断をすることが求められるということです。
信用保証制度について
来年(2024年)4月からは創業5年を超えた事業者も経営者保証の解除を選択できる信用保証制度も始まります。
法人から代表者への貸し付けがないことや計算書類を金融機関に定期的に提出しているなどの条件を満たし、経営状態に応じた上乗せ保証料を負担すれば解除できます。
一方、経営者が保証しないことにより、金融機関がスタートアップに対して貸し渋るケースが出てきては本末転倒となってしまいますので、金融機関に対しては柔軟かつ高度な融資の判断が期待されます。
また、経営者保証をとらない、外すには、あくまでも経営者と会社との財産が分離されるなど、ガバナンスがきちんと整備されていることが前提です。スタートアップは経営者と会社とが経済的にも法的にも混沌としがちですので、注意が必要です。
経営者の再生
既に会社の保証をしている経営者の再生に関しては、経営者保証ガイドラインに則った再生をおすすめします。
破産時には、自由財産(99万円)が原則として経営者の手元に残るのみですが、経営者保証ガイドラインによれば、その他に、事業再生等の早期着手により法人からの回収見込額が増加した場合、99万円の自由財産に加えて「一定期間の生活費(雇用保険の考え方を参考に、年齢等に応じて約100万円~360万円)」を経営者に残すことや「華美でない自宅」について、経営者の収入に見合った分割弁済をする等により、経営者が自宅に住み続けられるよう検討が行われます。
最後に
これまでも経営者保証ガイドラインという指針がありましたが、法的な拘束力はなく、関係者が自発的に尊重し、遵守するルールでしたので、今回の「経営者保証改革プログラム」はガイドラインが一歩も二歩も進められたことになります。
当事務所の弁護士はこれまで経営者を簡単に破産させることはせず、経営者保証ガイドラインに則って金融機関と粘り強く交渉を行い、経営者の再生をお手伝いして参りました。
スタートアップ、ガバナンスはもちろんのこと、既に経営者保証を行っており、事業が上手くいかなくなっている場合についても当事務所にご相談下さい。
お問い合わせはこちらから。