民法改正 共有制度の見直しについて 

2023年4月1日、2021年に改正された民法が施行予定となっています。
最近の民法改正といえば2020年4月の債権法がピックアップされていましたが、今年施行される改正法は、①相隣関係規定の見直し②共有制度の見直し③所有者不明土地管理制度等の創設④相続制度の見直しが改正点となっています。

Utops法律事務所のブログでは、この改正民法について回を分けてご紹介します。

今回は第2回、②共有制度関係規定の見直しについてです。
※第1回①相隣関係規定の見直しについてはこちら

目次

共有関係とは

物の所有権は、単独で一人(または一法人)が持っていることもあれば、複数人で持ち合っているということもあります。
複数人で持ち合っている関係が共有関係であり、共有されている物は共有物、共有している者は共有者、共有者が持っている権利を持分といいます。
夫婦共同の名義で一つの自宅を所有しているケースや、親の遺産である物を兄弟姉妹間で持ち合っているようなケースが典型的です。

このような共有状態にある場合におけるルールも民法に規定されており、その規定がこの度改正されました。

共有物の使用

共有する土地・建物に共有者が住むことなどは、共有物を共有者が使用する行為です。

Before〉改正前民法249条
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。

After〉改正民法209条
(1)(改正前と同じ)
(2)共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。
(3)共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。

一部の共有者が共有物を使用していた場合、その使用している共有者が他の共有者に対してどのような義務を負うのかについて、改正前は規定がありませんでした。
改正事項は、判例上認められていた内容ではあるので、実質的に変更はありませんが、その使用している共有者が自己の持分を超えて使用している場合はその対価を他の共有者に支払うこと使用にあたり善管注意義務を負うことが明記されました。

共有物の変更

共有物の変更とは、共有物を物理的に変形させるなど、共有物の主要な性質、用途等を変更するような行為をいいます。
共有物である建物の増改築や、共有不動産全体に対する抵当権の設定が典型です。

Before〉改正前民法251条
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

After〉改正民法251条
(1)各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。

(2)共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

共有物の変更には、共有者全員の同意が必要なのですが、軽微な変更にまで全員の同意を得るのは手間で機動性に欠けます。また、共有者が誰であるか不明だったり行方不明であったりする場合は、共有者全員の同意を得ることは実際には困難です。

そこで、改正法では、共有物の形状又は効用の著しい変更を伴わない軽微な変更については持分の過半数の共有者の同意で可能としました。
なお、形状とは外観・構造などであり、効用とは機能や用途を意味しますので、軽微な変更とは、物理的な変化は生じるけれど、外観・構造・機能・用途の変化は小さい行為ということになります。具体的には、砂利道をアスファルト舗装にすることや、建物の外壁・屋上の防水工事が例といえます。

また、共有者が誰か不明・行方不明の場合は、裁判所は、共有者の請求によって、その不明な共有者以外の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができるとされました。

共有物の管理①

共有物の管理とは、共有物の変更に至らない程度の利用・改良行為等をいいます。
共有物のリフォーム・改装、共有宅地の整地、共有物の使用貸借契約や賃貸借契約の解除、短期の賃貸等がこれにあたります。

Before〉改正前民法252条
共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

After〉改正民法252条
(1)共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者がいるときも、同様とする。

(2)裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。

 ①共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
 ②共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。

(3)前二項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

(4)共有者は、前三項の規定により、共有物に、次の各号に掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(以下この項において「賃借権等」という。)であって、当該各号に定める期間を超えないものを設定することができる。

 ①樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等:十年
 ②前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等:五年
 ③建物の賃借権等:三年
 ④動産の賃借権等:六箇月

(5)各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。

第1項の後段は、共有物を使用する共有者がいる場合でも、持分の過半数で管理に関する事項を決定することができることを定めました。
つまり、共有者間での定めがないまま共有物を使用する共有者がいても、その同意なく、持分の過半数でそれ以外の共有者に使用させる旨を決定することができることになります。

第2項では、共有者のなかに、誰か不明な者や行方不明者がいる場合、または、管理に関する事項の決定について賛否を明らかにしない共有者がいる場合、管理行為が結局できないことになってしまうのを避けるため、共有者の請求により、裁判所が、それ以外の共有者の持分の価格の過半数で、共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができるとされました。

一方、第3項では、「共有者間の決定に基づいて」共有物を使用している場合、その使用している共有者に、特別の影響を及ぼすべきときは、その共有者の承諾を得なければならないとされました。
特別の影響とは、対象となる共有物の性質に応じて、管理に関する事項の決定(の変更等)をする必要性と、それによって共有物を使用する共有者に生ずる不利益とを比較して、共有物を使用する共有者に受忍すべき程度を超えて不利益を生じさせることをいうと考えられます。
例えば、建物共有者A、B及びCが各3分の1の持分で建物を共有している場合に、そのうち2人以上でCがその建物を住居として使用することを決定し居住しており、また、Cが他に住居を探すのが容易ではなく、Aが他の建物を利用することも可能であるにもかかわらず、AとBによって、Aに共有建物を事務所として使用させることを決定するようなことは、Cに特別の影響を及ぼすものとして、Cの承諾を得なければならないといえそうです。

なお、第4項では、共有物を賃貸等したいときに、管理行為として持分の過半数で決定できる賃借権等の目的物と期間を明示的に定めています。

共有物の管理②

これまで、共有者が多数である場合などに、共有者を代表して特定の共有者が共有物を管理するということは事実上行われてきました。改正法では、共有物の管理者ということで新たに制度化されました。

Before〉改正前民法規定なし

After〉改正民法252条の2(共有物の管理者)の新設
(1)共有物の管理者は、共有物の管理に関する行為をすることができる。ただし、共有者の全員の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。

(2)共有物の管理者が共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有物の管理者の請求により、当該共有者以外の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

(3)共有物の管理者は、共有者が共有物の管理に関する事項を決した場合には、これに従ってその職務を行わなければならない。

(4)前項の規定に違反して行った共有物の管理者の行為は、共有者に対してその効力を生じない。ただし、共有者は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

共有物の管理者の選任・解任は、共有物の管理のルールに従い、共有者の持分の過半数で決定されます。なお、共有者以外を管理者とすることも可能です。

管理者は、管理に関する行為(なお、軽微な変更は含みます)をすることができます。
誰なのか不明だったり行方不明の共有者がいる場合には、管理者の申立てにより裁判所の決定を得た上で、それ以外の共有者の同意を得て、変更を加えることは可能です。

また、管理者は、共有者が共有物の管理に関する事項を決定した場合には、これに従ってその職務を行う義務を負うとされました。なお、管理者がこの決定に違反した場合、共有者に対しては違反行為の効力は生じませんが、この決定に反することを知らない第三者(善意の第三者)には、管理者の違反行為が無効であることを対抗することができないとされました。

共有者のなかに行方不明者がいる等、共有物の取り扱いについて共有者間で必ずしも一致して対応できるとは限りません。
それでも共有物を取り扱っていなかければならないところ、今回の改正でとり得る手段が増えたといえます。
共有物についてお困りの際は、弁護士にご相談ください。

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