今回は、従業員が会社を退職する際の賞与の取り扱いについて説明します。
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賞与(ボーナス)について
そもそも、賞与支給に関して会社の制度として導入するか否かは、それぞれの会社の裁量に委ねられているものではありますが、多くの会社で賞与(ボーナス)の制度が導入されています。
そして、一般的に、会社の就業規則、労働協約、又は個別合意等によって賞与の支給時期・金額・計算方法等が具体的に定まっているような場合には、具体的な賞与請求権が従業員に生じることとなります。
「支給日在籍要件」について
賞与を導入している会社で多く見られるのが「支給日在籍要件」です。
「支給日在籍要件」とは、賞与支給対象期間の全部又は一部を勤務しているというだけでなく、賞与支給日に会社に在籍していることを支払要件とするものです。
支給日在籍要件の有効性について
そして、かかる「支給日在籍要件」については、賞与の特性(過去に行った勤務に対する賃金としての性質だけでなく、将来の勤務への奨励という性質を持つことなど)から、多くの事例で合理性が認められるとして有効とされています。
例えば、「自己退職」等によって支給日に在籍できなかった従業員に対して、賞与を不支給とする規定を設けている会社は多くみられるところです。
支給日在籍要件が制限される場合
「支給日在籍要件」がすべて有効とされるわけではないことに注意が必要です。
例えば、
・就業規則所定の支給時期より約3か月遅れて支給された賞与につき、支給日在籍要件の規定を適用することは妥当でないとされた事例(最高裁昭和60年3月12日判決)
・会社側の事情により整理解雇をした際、賞与の支給日在籍要件の規定を適用することは妥当でないとされた事例(東京地裁平成24年4月10日判決)
・病死した従業員に対して支給日在籍要件の規定を適用することは妥当でないとされた事例(松山地裁令和4年11月2日判決)
※なお、定年退職者について支給日要件を有効とした例(東京地裁平成8年10月29日判決)なども存在し、退職理由によって様々な観点からの総合的な判断が必要となります。
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