公益通報者保護法が改正され、本年6月1日から常時従業員300名超の事業者に対しては内部通報体制の整備が義務化されました。
内部通報制度というと、問題をややこしくするという印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
しかしながら、実は内部通報制度を適正に整備・運用すれば、不祥事の早期発見とそれへの適切な対処という会社の自浄作用を発揮することができ、損害を最小限に抑えることのできる有益な制度です。
また、適正な内部通報制度運用により、行政機関やマスコミ等の外部への通報を抑止し、問題を拡大させないことが期待できます。
通常通報者は会社自身がきちんと問題に対して聞く耳を持ち、社内で適正に対処するのであれば、それが最善と思っていますので、外部に問題が拡大すること防ぐことができるのです。
内部通報制度の通報窓口はどこに置くべき?
通報窓口は、社内だけではなく、社外にも置くことをお勧めします。
社内窓口だけですと、特に通報者が従業員であった場合に、自身の立場が害されなかと不安を覚え、通報に躊躇するという側面があり、通報制度が形骸化するおそれがあります。人事部門に通報窓口を設置していますと、通報の事実が人事評定に直結するとの誤解を与えかねませんので、避けるべきだといえるでしょう。
また、役職員に身内が多い場合などは、中々問題が顕在化せず、そもそも問題として認識できておらず、発覚したときには手遅れということがありますので、特に外部窓口を置くことをおすすめします。
消費者庁の平成28年実態調査報告書によれば、内部通報制度を導入している1,607社の事業者のうち、通報窓口を社内外いずれにも設置していると回答した事業者は59.9%、社内のみに設置していると回答した事業者は32.1%、社外のみに設置していると回答した事業者は7.0%でした。今後社内窓口の他に社外窓口の設置する体制がスタンダードになっていくのではないでしょうか。
社外窓口を弁護士(法律事務所)に置くことをおすすめする理由
通報は高度の秘匿性の確保が必要で非常に扱いが難しいところ(守秘義務違反は30万円以下の罰金)ですので、法の専門家である弁護士に依頼すれば、秘匿性が担保できることがあげられます。
また、通報に対応するに際しても、どのように対応すれば良いのか法的観点から助言を受けることができ、内部通報制度を適正に運用することができるのです。
実際に、社外窓口を採用している事業者の49.2%が顧問弁護士を社外窓口としています。
一般に顧問弁護士は顧問先の事業に関する相談を日常的に受けていますので、迅速かつ的確に通報事実を把握し、問題点を整理することが期待できます。
一方、顧問弁護士は会社の利益を擁護する立場にあるため、中立公正が求められる通報の窓口の立場との間には利益相反の危険性を孕んでいます。
当事務所では顧問先の事業者の外部窓口となっていますが、相談を受けた件について法的問題に発展した際は、通報者はもちろんのこと、事業者の代理もしないという方針をとっています。
もっとも、内部通報制度は事業者の自浄作用ですから事業者の利益を守る制度ですので、同じく事業者の利益を擁護する顧問業務とは必ずしも矛盾しないと考えることもでき、利益相反が顕在化するのは、通報内容を全面的に争う場合や、通報者が事業者の対応に納得がいかなかった場合で法的手続きに発展するなどの限定的な場面であると考えることができます。
事業者様には上記のデメリットとメリットを考慮して顧問法律事務所に外部窓口を設置するのか検討する必要があるでしょう。
Utops法律事務所では、内部通報の外部窓口のみにつきましても承っております。
また、通報対象は広く認めている事業者が多いですが、通報の大部分は労務問題が占めます。
特にハラスメント問題は立場の弱い女性が被害者・通報者となる場合も多く、女性弁護士の在籍するUtops法律事務所にお任せ頂ければ、通報の敷居を下げ、信頼感のある制度設計ができ、企業価値を高めることも期待できると思います。
当事務所では、内部通報制度の制度設計から関わるのか、窓口機能のみなのか、その後の通報者への対応も行うのか、調査も行うのか等、事業者様に合わせて、カスタマイズ致しますので、是非一度ご相談ください。
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