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婚前契約書の公正証書を弁護士に頼むときの費用は?法的効力についても

Utops法律事務所

これから結婚するにあたって現実的に考えることは色々とあると思います。結婚生活のルールを決めておきたい。結婚生活を送るうえで生活費の分担をはっきりさせておきたい。

親から相続した財産や、起業した会社の株式など、自分の財産を持っているけど結婚したら財産はすべて夫婦の共有になるのだろうか。二人で約束事を決めても、後々、言った言わないの喧嘩になってしまうのではないか。

こういったお考えやお悩みがあるカップルには、結婚をする前に、お互いによく話し合ったうえで約束事を決め、合意したことを書面化する「婚前契約書」を締結するという解決の方法があります。

本記事をお読みいただくと、次のようなことがわかります。

婚前契約書の作成費用はどのくらいかかるのか。そもそも婚前契約書ではどんなことを決めておけばいいのか。婚前契約書を結んでおけば法的に何でも有効なのか。

婚前契約書の作成費用

依頼する弁護士によって費用はまちまちです。そのため依頼する弁護士に確認していただく必要がありますが、11万円~内容によって20・30万円程度という範囲で費用設定していることが多いようです。

  • Utops法律事務所では、婚前契約書の作成を11万円(消費税込)~承っております。

※婚前契約書の内容が特殊なものであったり、婚前契約書で取り上げる財産が高額であったり、公正証書によって作成する場合には、11万円を超えることがあります。

婚前契約書を作成するうえで、弁護士に依頼しなければいけないわけではありません。結婚しようとされているお二人だけで合意して作成することもできます。

しかし、これから始まる結婚生活に関してせっかく約束事を決めるものですから、その内容が法的に有効なのか、決めた内容の意味がはっきりしているか、ちゃんと確認しておく必要があります。また、後からどちらかに誤解があったとか、無理矢理に合意させられたから取り消したいとか言い出されないように、作成のプロセスで双方が内容をよく理解して納得したうえで結ぶことが大切です。

弁護士に依頼することで、婚前契約書の内容や意味、効力をはっきりさせ、当事者の理解を深めたうえで結ぶことができるでしょう。

なお、婚前契約書を「公正証書」として作成する場合や、婚前契約書の署名や押印が本人のものに間違いないことを証明してもらう「私署証書」、婚前契約書の内容が真実であることを本人が宣誓し、そのことを公証人が認証する「宣誓認証」を利用した場合には、公証役場に支払う手数料が別途発生します。

婚前契約書を公正証書で作成しておかなければいけないのかとお考えの方

公正証書は、公証人が法律に従って作成する公文書なので、カップルの間で作成する私文書よりも効力が強いといったメリットがあるイメージをお持ちかと思います。しかし、婚前契約書は公正証書で作成しなくても有効に作成できます。また、必ずしも公正証書で作成することに馴染むものともいえません。

通常、公正証書のメリットとして、合意した内容に反して約束した金銭支払いをしない場合に、差押を行える執行力が与えられる「強制執行認諾文言」を入れることができることが挙げられます。つまり、強制執行認諾文言付きの公正証書には、金銭支払いについて裁判の勝訴判決と同等の効力が認められるということです。

これは非常に大きなメリットですが、婚前契約書の場合は、例えば、将来において「仮に」不貞をしたら慰謝料●●万円を支払うといったあくまで仮定の合意や、法的な効力があるとか約束を法的に強制できるとは言えないことがらを定めることも多くあります。

そのため、この強制執行認諾文言を入れることができないことも多く、公証人によっては作成の依頼を受けないということもあるのです。

婚前契約書で決めておくべき内容

実は、婚前契約書に定めなければいけないことは決まっていません。そのカップルが気になっていること、描いている結婚生活の形によって、決めておくことは変わってきます。

通常は次のようなことがらについて決めておくことが多いです。

(1)家事・育児の役割・分担

夫婦共働きの家庭が多いこともありますし、生活していくうちに家事・育児の負担が夫婦のどちらか一方に偏ってきてしまい、その不満が夫婦の仲を悪化させてしまうことも珍しくありません。

そこで、結婚前に、家事や育児を分担する内容や割合についてよく話し合って取り決めておくことで、そういった事態が発生するのを防止したり、お互いの行動の指針となって円滑な結婚生活にしやすくすることが期待できます。

(2)生活費の負担割合・家計の管理方法

生活費や家計管理は、結婚生活で日々問題となる重要なことがらでしょう。

例えば、家計を夫婦の一方が管理する場合、誰が管理するのか、毎月いくらを生活費として家計に入れるか(手取りの●割、とか、家賃と水道光熱費は夫、食費と日用品費が妻の負担で、教育費は●:○といった決め方もあるでしょう。)といったことを決めておくことが多いです。

なお、家計費に回す以外の分は、夫婦共同の貯蓄等にするとか、稼いだ側の特有財産とすることなどを決めておくことも考えられます。

お互いに、相手がどれくらい稼いでいるのか把握するため、給与明細や預金通帳は開示することを約束しておくということもあり得ます。

また、夫婦の一方が、散財・浪費していたことが発覚して離婚話に発展するということも多くあります。多額の出費は生活の維持にも夫婦の信頼関係にも大きな影響を及ぼします。こういった事態に対しては、●円以上の支出をしようとする場合には、相手の事前の同意必要とすると定めておくことで、基準を明確にしておくということも考えれます。

いずれ妻が妊娠・出産した際、共働きであっても妻が仕事を離れざるを得ず、所得がなくなったり、かなり下がってしまうこともあり得ます。この様に、結婚時の想定で決めておいた収入や支出の状況が変わってくることも当然起こりますので、その場合の生活費負担の定めや、協議して見直す旨の規定も定めておくべきでしょう。

(3)夫婦の財産関係

それぞれの財産や、結婚生活中に得ることになる財産について、夫婦どちらに帰属するのかについても決めておくべきでしょう。

カップルが結婚前に持っている財産や結婚後に得た財産について、それぞれの物なのか、夫婦の共有の物なのか夫婦間で考えに相違が生じることも珍しくありません。

法的には、①結婚前から有する財産と②婚姻中夫婦の一方の名で得た財産は、その者の特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産)であり、③夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定されます(民法第762条)。

ただ、実際には、結婚前から持っていた預金口座に結婚生活上の入出金があり、特有財産とは言い難くなっているとか、結婚(婚姻届の提出)の前の同棲中に買ったカップルで使う自家用車は共有財産ではないのかとか、夫婦の一方が起業した会社の株式について、もう一方はその会社の経営に全く関与せず別の仕事をしていた場合にも等しい割合で夫婦共有の財産なのかなど、財産の帰属について夫婦間で意見が分かれることもあります。特に、残念ながら離婚に至ってしまった場合の財産分与の場面では、この意見の相違が顕在化して大きなもめごとになることは珍しくありません。そこで、

  • ①結婚前から有していた財産、
  • ②結婚期間中に、夫婦一方の名義で得た財産、
  • ③結婚期間中に、得た夫婦どちらの名義か不明確な財産のそれぞれについて、夫婦のどちらか、または共有の財産となるかをあらかじめ決めておくことが考えられます。

このような取り決めをしておくことで、財産分与の場面では、特有財産なのか財産分与の対象となる夫婦共有の財産なのかを区別しやすくできます。

特に、代々受け継いできた土地があるとか、親から受け継いだ大切な資産がある、自分固有の特別な才覚や努力によって築いている財産であるといった場合には、それらを財産分与の対象としないで済むことがあり得ますので、意味が大きいでしょう。

(4)相手方の不貞やDVに対する備え

夫婦の一方が不貞やDVをしてしまった場合に備えて、婚前契約書であらかじめ慰謝料などのペナルティを定めておくこともあります。これは、あらかじめペナルティを定めておくことにより、不貞やDVに対する抑止力とすることを期待した定めといえます。

なお、不貞に対しての慰謝料を定めておく場合に、あまりに高額な設定をすると、暴利として公序良俗に反して無効となるおそれがありますので注意が必要です。不貞を原因とする離婚の慰謝料の相場は100万~300万円といわれていることからすると、例えば、一般的な収入・財産状況のご夫婦で一億円の慰謝料金額と設定しても、裁判では無効と判断されることが考えられます。

(5)親族との付き合い方

結婚は夫婦間だけではなく、その親族との関わりもつきものです。同居家族同然の付き合いが当たり前という方もいれば、距離感を保った付き合いでありたいという方もおられます。そして、親族との付き合い方が夫婦関係にも影響することもあります。

そこで、結婚後の親族との付き合い方ついてよく相談して定めておくことも考えられます。例えば正月は夫の実家に、お盆は妻の実家に毎年帰省するといったことを決めておくことも考えられます。

(6)お互いの確認

夫婦になろうというカップルとはいえ、お互いのこれまでの人生をすべて見ているわけではありません。特に健康状態や借金問題、職業や収入など、相手について聞いていた話と違う事実が結婚後に判明して、生活や婚姻の継続に影響するということもあり得ます。

そこで、婚前契約書において、健康状態に問題ないかとか、借金がないことについてお互いに表明して確認し合っておくということもあります。特に、

  • ①健康状態に関すること、
  • ②婚姻歴・子どもの有無に関すること、
  • ③職業・収入に関すること、
  • ④借金に関すること、
  • ⑤賞罰(犯罪歴)に関することなどについてです。

婚前契約書の法的効力

婚前契約書は、カップルの合意によってお互いに権利や義務を発生させるものです。

ただ、その法的な効力については、婚前契約書で合意したからといって、有効ではないものや、直接的にも間接的にも強制することまではできないものもあるので、注意が必要です。

(1)有効とみなされないおそれのある事項

婚前契約書に定めた内容が、公序良俗に反するようなものだった場合には、その部分が無効になることがあります。

① 同居義務・扶助義務に反する定め

結婚しても同居しないといった定めや、夫婦の一方またはお互いが生活費を一切負担しないといった定めも無効になります。同居義務も扶助義務も、結婚している夫婦における基本的で本質的な義務であるとされているからです。

ただし、これらの取り決めも、夫婦間で婚前契約書に定めたことに従うという分には、問題ありません。あくまで、婚前契約書での定めに従った行動を強制できるわけではないということです。

② 夫婦一方から自由に離婚できる定め・離婚事由を制限する定め

夫婦の一方的な申出があった場合には、それだけで離婚できるといった内容の定めは、夫婦の合意か、民法で定めれた離婚事由によってのみ離婚ができるとする婚姻制度と相反するものであり無効です。

また、法的に離婚が認められる場合が民法で定められているのに、離婚できる事由を婚前契約書による合意で制限することもできず、離婚できる事由を制限する定めも無効です。

そのため、先ほど、「2.婚前契約書ではどんなことを決めておくべきか」で取り上げた(6)お互いの確認で確認し合った事項に反する事実が判明した場合でも、それだけを理由に直ちに離婚が認められるというものではありません。

③ 法外に高額な慰謝料の定め

不貞があった場合の慰謝料金額を定めておくこともありますが、先ほどご説明したとおり、法外に高額な慰謝料金額では無効となってしまいます。

(2)合意した内容が法的に実現しないおそれのある事項

先ほど、「2.婚前契約書ではどんなことを決めておくべきか」で取り上げた、(1)家事・育児の役割・分担、(5)親族との付き合い方のように、例えば、「食後の皿洗いは夫が行う」、「毎年お盆には家族全員で妻の実家に帰省する」と婚前契約書で合意したとします。

ただ、これらは、法的な手段で強制できるものではありませんので、相手が決めごとに反したとしても、法的には実現させることができないものです。

しかし、あらかじめこのように決めておくことで、夫婦としての行動の指針となりますし、いたずらに揉めることを避けられますので、結婚生活を円滑にする効果が期待できます。

万が一、離婚した場合を想定して、未成年の子どもの親権者を夫婦のどちらにするのか婚前契約書で決めておくことはできます。

しかし、いざ離婚することになって、相手が婚前契約書で決めていた親権者の指定を受け入れられず争った場合には、家庭裁判所は、子どもの利益(福祉)の観点から、どちらが親権者となる方が適切であるかという判断をして決定されることになるでしょう。

なお、締結された婚前契約書は合意によって相互の約束事として成立していますから、その内容を変更しようとしても、夫婦の一方が自由に変更することはできません。お互いの合意によって変更することが必要です。

変更の際は、変更を合意する契約書を締結して、書面によって変更するべきです。

婚前契約書は弁護士に相談するのがおすすめ

婚前契約書ではどんなことを決めておけばいいのか、婚前契約書で定めた事項でも有効なものと実現がされないものがあり得ることをご紹介しました。

婚前契約書はカップルの考えや状況によって何を決めておくべきかが大きく変わってきます。また、婚前契約書で取り決めた事項が法的に意味のあるものであるかどうかはよく理解しておく必要があります。

このように、自由度の高い婚前契約書も、実は複雑な法的な課題を含んでいます。婚前契約書の作成を考えていらっしゃる方は、弁護士にご相談されることをお勧めします。

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