離婚における問題となる点は?離婚を進める際に役立つ基礎知識

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離婚したいと決心したけれど、何から始めたら良いのか…?
どのような手続をしたらよいのか…?
離婚に際して問題となるのはどういう点か…?

離婚を進めるにあたり、わからない点が多くある思います。

この記事では離婚の基本的な流れや手続、内容等について説明いたします。
離婚を考えたときにまずはこの記事を読んで頂き、自分はどのような手続を踏むべきか、何が問題となりそうなのかなど、参考にして頂ければ幸いです。

離婚手続きの種類

離婚には大きく分けて①協議離婚、②調停離婚、③裁判離婚の3種類があります。(その他審判離婚などもありますが、あまりとられることのない手続きですので省略します。)

協議離婚

協議離婚とは、夫婦双方とも離婚の意思がある場合に、双方の署名のある離婚届を役所に提出することで成立する離婚のことです。

親権者の指定

離婚届を書くにあたり、最低限決めなければならないのが、未成年の子どもがいる場合、親権者を夫婦のどちらにするのかということです。

離婚後の共同親権が話題になっていますが、日本では夫婦のどちらか一方を親権者として定めな
ければなりません。

親権者とは、子どもの監護、教育を行ったり、子どもの財産を管理したりする権限と義務を有する親のことです。夫婦が婚姻している間は、夫婦の二人が子どもの親権者となりますが、離婚した場合は夫婦のどちらか一方が親権者となるものとされています。

厚生労働省の離婚に関する統計資料によると親権者が父親になるのは約13%、母親になるのは約87%となっています。
多くの場合、母親が親権者になっていますが、原則として母親が親権者になるというルールがあるわけではなく、夫婦の話し合いにより、自由に決めることができます。

親権者をどちらにするかは、親権は子どもの利益のために、監護・教育を行ったり、子の財産を管理したりする権限であり義務ですので、子ども利益を一番に考え、どちらが親権者として適任かを冷静に話し合い、決定する必要があります。
冷静な話し合いが難しい場合は、離婚調停の場で話し合うことが望ましいということになります。

面会交流について

子どもの親権者を決めたら、子どもと親権者とならない親との面会交流に関する取り決めを行います。

離婚届にチェック欄があるため、話し合って決めるべき事項です。
決めていなくても離婚届が受理されないことはありませんが、民法にも親権者の決定と同様に決めるべき事項として定められています(民法第766条)。

面会交流も「子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」(民法766条第1項)と定められているように、子どもは親の付属品ではないので、相手に自分が会いたくないから面会交流を認めないなどということのないように、お子さまの利益を最優先して話し合いましょう。

養育費について

養育費に関しても、きちんとお子さまが健やかに成長できるように適正金額を決めましょう。
もっとも、収入に比して高額に定めると、結局支払いきれず、滞るという事態もありますので、離婚後の生活についても考慮の上、検討して下さい。

以上のことを決めれば、協議離婚自体は成立しますが、その他のことを何も決めないで離婚した場合は、後々にトラブルになりがちです。

離婚協議で話し合った内容は「公正証書」を作成することがポイント

詳細は後述しますが、面会交流と養育費の他、財産分与、慰謝料などについても、離婚前に話し合うべきです。 その上で、話し合った内容について、公証役場で、「公正証書」を作成することが望ましいです。
ただの合意書では足りないのか?とお考えになる方もいらっしゃいますが、合意書だけですと、強制執行ができません。つまり、相手方の財産や給料から強制的に養育費や財産分与額、慰謝料などの回収ができないのです。
公正証書は強制執行認諾条項を入れますので、公正証書の内容について、強制執行することができます。

したがいまして、離婚に際して金銭のやり取りがあるようならば、公正証書を作成することをオススメします。

調停離婚

調停離婚とは、家庭裁判所に申し立てて、調停委員が介在した形で離婚を話し合い、合意できたら調停成立ということで、離婚が成立します。

双方の合意があって初めて離婚が成立するという意味では協議離婚と同じですが、第三者である裁判所(調停委員)が介在して話し合いを進めていくという点が協議離婚と異なります。

調停離婚は俗称で、正式名称は「夫婦関係調整調停(離婚)」です。
ちなみに夫婦関係調整調停(円満)というものもありますが、これは離婚ではなく、円満に夫婦仲がいくように申し立てられる調停です。

離婚にまつわる調停には細かく分けると10種類以上ありますが、ここでは、「夫婦関係調整調停(離婚)」と、かかる離婚調停と同時に申し立てられることの多い「婚姻費用分担請求調停」、「面会交流調停」の3つを確認しておきましょう。

夫婦関係調整調停(離婚)について

夫婦関係調整調停(離婚)とは、離婚について夫婦の間で話し合いがまとまらない場合に申し立てる調停手続です。
離婚するかどうかについて話し合いがまとまらない場合はもちろんのこと、離婚後の子どもの親権者を夫婦のどちらにするのか、養育費、離婚に際しての財産分与や年金分割の割合、慰謝料などの話し合いもまとめてすることができます。
一般的な離婚調停のことだと思って頂いて構いません。

管轄

離婚調停の申立先は、配偶者の住所地の家庭裁判所が基本です。
同居中はその住所地の家庭裁判所、別居している場合は、申立人から見た相手方、つまり、配偶者の住所地の家庭裁判所になります。

住所地とは関係なく夫婦が合意で定める家庭裁判所でも構いません。
離れた場所で別居している場合は、どちらにとっても通いやすい家庭裁判所を選ぶとよいでしょう。

申立費用

申立てに必要な費用は、収入印紙1200円分のみですが、夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)なども必要になるため、数千円程度は費用が掛かります。

申立書の作成

申立書は家庭裁判所のHPにフォームがありますので、それに入力し管轄の家庭裁判所へ提出します。

申立後の流れ

申立てが受理された後は、家庭裁判所から調停期日の通知が届きます。
期日が入るのは申立てから約1カ月から2カ月後となります。期日の変更はできる場合もありますので、どうしても都合がつかない場合は家庭裁判所に連絡して再調整をお願いしましょう。


当日になったら、調停期日通知書を持参のうえ、家庭裁判所に赴きます。原則として平日の10時または13時半に指定されます。10時の場合は午前中いっぱい、13時半からの場合は通常は2時間以上かかります。


まずは、申立人が調停室に入り、調停委員(一般的には男女1名ずつ)に離婚調停を申し立てることになった経緯や、その他、言いたいことを主張します。時間は限られているため、主張したいことをまとめておいた方がよいでしょう。


申立人が退出した後で、次に相手方が調停室に入り、調停委員と話をすることになります。

離婚調停の場では、夫婦が顔を合わせることはありません。
待合室も別々に用意されているため、夫婦で言い争いをするような事態にはなりにくいです。


調停委員は中立の立場で双方から話を聞いて、妥協点を探り、話し合いをまとめていきます。
調停期日は1日で終わるわけではなく、2回から4回程度行われます。
連続して行われるわけではなく1カ月から1ヶ月半程度間が開くことが多いため、最低でも3カ月から長期間に渡り話がまとまらない場合は、1年以上かかる場合もあります。


数回の調停期日を経て話し合いがまとまれば、調停が終了し、合意した内容が調停調書に記されます。調停調書は、通常は離婚後の名字が変わる方が提出すると定められることが多いです。ですので、日本では妻の方が提出すると定められることが多いです。


離婚調停が成立すれば、離婚も成立しますが、協議離婚と同様に離婚届を作成し(相手方の署名押印や証人欄の記載は不要です。)、調停調書の謄本を添付して役所に提出する必要があります。
離婚届は、離婚調停の成立した日を含めて10日以内に提出します。10日を過ぎると、5万円以下の過料が課されてしまいます。この場合、離婚が成立する日は、「調停が成立した日」になります。※離婚届を提出した日ではありません。

また、調停調書には、養育費、慰謝料、財産分与等について記載することがありますが、後日、相手方が未払いとなった場合は、調停調書があれば、前記の公正証書と同じく執行力を有しますので、強制執行により回収を図りやすくなります。

婚姻費用分担請求調停について

婚姻費用分担請求調停とは、離婚前に別居している夫婦の一方が、相手方に婚姻費用を請求するための調停手続きです。婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を送るために必要な生活費などのことです。婚姻中の夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する義務があります。(民法760条)

この義務は別居している間でも生じるため、例えば、夫が生活費を出していた場合、妻が勝手に家を出て実家に帰った場合でも、夫は妻に対して生活費などを支払う義務が生じます。この支払いがなされていない場合に、妻が夫に支払いを求めるための調停手続きを婚姻費用分担請求調停と言います。

調停手続きの流れは、上記に紹介した離婚調停とほぼ同じです。

離婚調停と異なる点

①婚姻費用分担請求では、目安となる額が裁判所から公表されている。
どれだけの額の婚姻費用を請求できるのかの目安が、裁判所により公表されています。
「養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究」、通称「算定表」と呼ばれるもので、夫婦それぞれの収入、子どもの人数、年齢によって婚姻費用が簡単に算定できるものです。
インターネット上で公表されていますので、参考に算出してみてください。
調停委員も基本的に、算定表を基にして、適切な額を探ります。

②婚姻費用分担請求調停不成立の場合は自動的に審判手続が開始される。
離婚調停では、調停が成立しない場合は、離婚できないという結果になるだけですが、婚姻費用分担請求調停では、話し合いが決裂しますと、裁判官が自動的に、審判手続きを行います。

つまり、一方は相手方にこれだけの婚姻費用を支払いなさいと言う審判を下します。
この審判が確定してしまうと夫は、婚姻費用支払い義務が生じてしまいますから、不服がある場合は、2週間以内に即時抗告という不服申立をする必要があります。
即時抗告すると高等裁判所が判断を行います。即時抗告は不利益変更禁止の原則(申立人が不利益を被るような変更はできないというルール)が適用されません。最初の審判(原審判)より不利な結果が出る可能性もありますので、即時抗告するかどうかは、慎重に検討することが大切です。

また、婚姻費用請求は過去に遡って請求することが実務上難しく、調停申立ての月から認められるという扱いですので、別居後は速やかに婚姻費用分担請求調停の申立を行ってください。
別居する時には事前に申立の準備をしておいた方が安心ですね。

面会交流調停

面会交流調停は、離婚後又は離婚前別居中に子どもを養育・監護していない親が子どもと面会等を行うことについての調停手続きです。面会交流は、離婚後だけでなく、離婚前別居している間にも認められています。

面会交流調停の手続きも離婚調停とほぼ同じです。

面会交流調停は調停が不成立になった場合には自動的に審判手続が開始されます。また、子どもに配慮した話し合いがなされるため、事例によっては、面会交流が認められないとの判断がなされることもあります。
なお、面会交流調停には、子どもは原則として関与しません。しかし、面会交流調停で決まったことは子どもにも大きな影響を与えるため、子どもの立場からの主張も一定程度認めるべきだとの考えから、弁護士が子の手続代理人として呼ばれる立場で関与することもあります。
この場合、弁護士は子どもの話をよく聞き、その声を調停の場で主張することになります。子の手続代理人制度は親権者の指定調停などでも利用できます。もっとも、子の意思能力が必要とされていますので、小学校中学年から高学年程度の理解力が必要となるでしょう。

また、家庭裁判所調査官と呼ばれる心理学や教育学の専門家が子どもと面会し意向を確かめることもあります。

裁判離婚

裁判離婚は、調停離婚で解決しない場合に家庭裁判所に訴訟を起こすもので、離婚のための最終手段です。法廷において裁判官の前で、それぞれの主張と反論を交わします。

裁判離婚が成立するためには法定離婚事由がなければなりません。
法定離婚事由とは次の5つの事由のいずれかです。(民法第770条)

1、配偶者に不貞な行為があったとき。
2、配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3、配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
4、配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5、その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

上記いずれかの事由があれば、離婚が認められます。ただし、有責配偶者からの離婚の請求は認められません。例えば、浮気している方から離婚したいと言っても原則として離婚は認められません。
裁判離婚では、離婚そのものの判断だけでなく、離婚後の子どもの親権者を夫婦のどちらにするのか、面会交流、養育費、離婚に際しての財産分与や年金分割の割合、慰謝料などについても、決めることができます。
裁判官が双方の言い分を聞いたうえで、離婚を認める判決を下すこともありますが、裁判の途中で和解を勧めることが多いです。判決により離婚することが決まる場合を判決離婚、和解により離婚が決まる場合を和解離婚とも呼びます。

裁判離婚の流れ

離婚訴訟を提起する側を原告と言いますが、裁判所は、原告の都合を確認したうえで、第1回の期日を決定します。訴訟提起から1か月から2か月後くらいに設定されます。訴状や証拠書類とともに、期日が訴えられた側(被告)に通知されます。これに対して、被告は、第1回期日の1週間前までに、答弁書を提出します。

第1回期日では、原告による訴状の陳述と、被告による答弁書の陳述がなされたうえで、反論、証拠の提出など次回の期日までに準備することの確認が行われます。
第1回期日で重要なことは、被告が原告の訴状に納得できない場合は、答弁書を提出することです。被告が答弁書を提出せず欠席してしまうと、原告の主張を認めたことになります。

次の期日では、弁論準備手続と呼ばれる手続きが行われることが多いです。相手方の主張に対する反論、自分の主張の補充などを記述した準備書面を提出する形で、お互いの主張を突き合わせます。

和解が成立した場合

裁判官は双方の主張を確認して和解が成立する見込みがあれば、和解を勧めます。
双方が納得すれば、和解が成立し、和解調書が作成されます。
和解調書が作成された場合は、役所に離婚届を提出する際に、和解調書の謄本を添付します。これは調停離婚と同じです。離婚届には相手の署名押印や証人欄の記載は不要です。

和解が成立しなかった場合

和解が成立しない場合は、裁判が続けられ、証拠調べが行われます。本人を法廷に出頭させた上で、本人尋問を行うことが多いです。

その上で、判決の言い渡し期日に裁判官が判決を言い渡します。判決の言い渡しから2週間以内に判決正本が送られてきますから、原告と被告のどちらの立場でも、その書面には目を通しましょう。そして、納得できない場合は、判決送達の日の翌日から2週間以内に控訴の手続きを取ることになります。具体的には第1審の家庭裁判所に控訴状を提出することになります。なお、離婚裁判の控訴審は高等裁判所で行われます。

判決に納得した場合は、判決送達の日の翌日から2週間で判決が確定します。
なお、判決離婚の場合も、役所への離婚届の提出が必要になります。
判決書の謄本と確定証明書を添付したうえで、離婚届を提出します。離婚届の記載については上記と同じです。

離婚で問題となり得ること

離婚の手続きは、上記に紹介したとおりですが、離婚では様々な法的問題が生じます。主なものをまとめておきます。

財産分与

財産分与請求権とは、離婚した者の一方が他方に対して財産の分与を求める権利です(民法第768条第1項)。
民法は、夫婦別産制を基本としていて、「婚姻中に自己の名で得た財産は、その者の特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいいます。)とする。」(民法762条第1項)と規定されています。なお、どちらの名義かはっきりしないものは、夫婦の「共有に属するものと推定」されます(民法第762条第2項)。
しかしながら、名義だけを基準にすれば、夫名義の財産の方が妻側の所得を上回るなど、夫婦間に経済的格差が生じてしまいますので、離婚に際し、こうした夫婦の経済的格差を調整するため、一定の財産的給付を求めることができる制度が財産分与です。

財産分与の三要素

財産分与には①清算的要素(夫婦が婚姻中に協力して蓄財した財産の清算)②扶養的要素(離婚後の経済的弱者に対する扶養料)③慰謝料的要素(相手方の有責な行為により離婚を余儀なくされたことについての慰謝料)の3つの要素がありますが、中心的要素は①清算的要素ですので、清算的要素について説明いたします。

財産分与の対象となるのは名実ともに夫婦の共有に属する財産であるところの共有財産と名義は一方に属するものの、夫婦が協力して取得して得られた財産であるとことの実質的共有財産です。遺産などの名実ともに一方が所有する財産である特有財産は財産分与の対象にはなりません。

次に、財産分与の基準時ですが、原則として経済的共同関係が消滅した時点とするのが現在の実務です。つまり、別居が先行していれば、別居時に存在した財産、別居していないのであれば、離婚時に存在した財産がそれぞれ対象となります。
肝心の財産分与の割合とルールについてですが、実は法律には規定がありません。
ただ、実際の離婚の場面では、特段の事情がない限り、夫婦の財産は原則として「2分の1」に分けるものとされています。

2分の1ルール

2分の1ルールは夫婦のどちらも働いて収入を得ていた場合は、もちろんのこと、夫のみが働き、妻が専業主婦だった場合にも適用されます。妻が働いていなかったとしても、夫が収入を得られたのは妻の内助の功があってのものとの考え方によるものです。
ただ、夫婦のどちらか一方が会社経営者、医者や弁護士などの特別な職業、芸能人と言った立場で、自らの才能や努力により多額の財産を築いたような場合は、特段の事情があるとして、2分の1ルールがそのまま適用されるわけではなく、修正されることもあります。特段の事情があると主張する側が、それを裏付ける具体的な資料等を提出することが求められます。

慰謝料

離婚における慰謝料とは、相手方である配偶者が不貞行為などの離婚原因となる行為を行っていた場合に、配偶者に対して請求できるものです。
この配偶者のことを有責配偶者とも言います。

離婚原因となる行為としては、浮気、不倫などの不貞行為の他、DV(ドメスティック・バイオレンス)、モラハラ(モラルハラスメント)、悪意の遺棄などが上げられます。しかし、こうした離婚原因は、証拠に基づいて、立証し主張する必要があります。証拠がなければ、慰謝料請求は難しくなります。

なお、有責配偶者に請求できる離婚慰謝料の額については、法律上のルールはありません。
そのため、具体的な額がいくらになるかは、事案や原因により異なります。

親権・監護権

夫婦の間に未成年の子どもがいる場合は、夫婦のどちらが離婚後の子どもの親権者になるのかを決めなければなりません。
協議離婚の場合は、話し合いにより、自由に決めることができますが、離婚調停や裁判離婚による場合は、約9割の事例で母親が親権者となります。家庭裁判所が、母性優先の原則といい、子どもの親権は母親に認めるべきと言う考え方を採っているためです。
父親側が、子どもの親権を獲得したい場合は、協議離婚の段階で話をまとめられなければ、難しくなります。

事実上の現在の養育状況も重視されます(現状維持に傾く)ので、子どもを連れて別居されてしまった場合には、早期に調停を申し立てる必要があります。

養育費

養育費とは、未成年の子どもが、経済的、あるいは社会的に自立するまでにかかる監護・教育のための費用です。衣食住の必要費、教育の費用、医療費など様々なものが含まれます。
養育費は、婚姻中はもちろんのこと、離婚後も父親と母親の双方が負担するものとされています。夫婦が離婚したとしても、父と子、母と子の関係は生涯変わらないためです。

離婚後の養育費の額は、協議離婚の場合は話し合いで自由に決めることができます。離婚調停や裁判離婚による場合は、「養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究」、通称「算定表」と呼ばれる目安を基準にして決められることが多いです。

離婚時に養育費を決めても、離婚後、相手方が支払ってくれないためにトラブルになることも多く、社会問題ともなっています。
養育費が確実に支払われるように、協議離婚の場合でも、強制執行認諾付の公正証書を作成することが安心です。

面会交流

親権者とならなかった親でも、離婚後も子どもと定期的に会うことができます。これを面会交流と呼びますが、離婚時には、面会交流のルールを決めることがあります。

面会交流のルールについては、法律に具体的な定めがあるわけではありません。
そのため、夫婦が話し合って自由に決めることができますが、面会交流は、親の権利と言うより子どもの成長のために必要なものと考えられており、子の利益を最も優先して考慮しなければならないものとされています。
しかし、離婚時に、面会交流のルールを決めたものの親権者である親が子どもに会わせることを拒否するという形でトラブルになることもあります。

離婚後の手続について

協議離婚はもちろんのこと、調停離婚、裁判離婚でも、離婚届を提出しなければなりません。離婚届は、本籍地又は所在地の市区町村役場に提出します。本籍地以外の市区町村役場に離婚届を出すこともできますが、この場合は、本籍地の市区町村役場から戸籍謄本を取り寄せる必要があります。
また、運転免許証やパスポートなどにより、届出人の本人確認を行うので忘れないようにしましょう。

調停離婚や審判、裁判離婚の場合は、上記で紹介したとおり、調停調書の謄本、判決の謄本と確定証明書などが必要になります。

名字の確定

多くの夫婦は、夫を筆頭者とする戸籍に入っているため、離婚した場合は、妻が夫の戸籍から出る形になります。

この場合、妻の選択肢としては、

1、婚姻前の氏に戻って、自分を筆頭とする新しい戸籍を作る。
2、婚姻時の氏を継続使用し、自分を筆頭とする新しい戸籍を作る。
3、婚姻前の氏に戻って、婚姻前の戸籍(つまり両親の戸籍)に戻る。

が上げられます。何もしなければ3のパターンになります。
もっとも、婚姻前の戸籍がなくなっている場合は1のパターンになります。2のパターンを婚氏続称といい、離婚から3ヶ月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」をすれば、選択できます。離婚届と同時に提出することもできます。

また、子どもの氏と戸籍も同様に手続きが必要です。
離婚後も子どもは、夫を筆頭者とする戸籍に残っているため、妻の戸籍に入れたい場合は、家庭裁判所に子の氏の変更許可の申し立てを行う必要があります。

家庭裁判所は審判という形で、許可するかどうかを決めますが、当事者の出頭が求められることはありません。通常は、数日で、子の氏の変更許可の審判書の謄本が渡されますので、これを基に、市区町村役場で、子の入籍届の手続きを行います。妻が婚姻前の氏に戻っている場合は、子どもの氏も同様に婚姻前の氏になります。

年金分割

年金分割とは、夫婦の婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割して、それぞれ自分の年金とする制度です。婚姻期間が長い熟年離婚の場合は、老後の年金に大きく影響してきます。

年金分割の手続きは、年金事務所で行います。

離婚時の年金分割の方法としては、3号分割と合意分割がありますので詳しく説明していきましょう。

3号分割について

3号分割は、平成20年5月1日以後に離婚等をし、国民年金の第3号被保険者であった方からの請求により、平成20年4月1日以後の婚姻期間中の3号被保険者期間における相手方の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を2分の1ずつ、当事者間で分割することができる制度です。

一般的には、専業主婦だった妻が夫の厚生年金について、年金分割を求める形になりますが、請求の期限は、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内とされています。なお、3号分割の場合は夫婦で合意する必要はなく、第3号被保険者側が単独で請求できます。

合意分割について

一方、合意分割は、婚姻期間中の厚生年金記録について、夫婦の合意または裁判手続きにより按分割合を定めた場合に請求できます。
請求の期限は、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内とされています。合意書などを提出することによって分割請求できますが、年金分割については年金事務所に合意書のフォームがありますので、離婚を合意時にかかるフォームにしたがって年金分割の合意書を作成する方が、不備を指摘されることもありませんので、お勧めです。

情報通知書請求が必要

年金を分割するには、分割の対象となる期間やその期間における当事者それぞれの標準報酬月額・標準賞与額、按分割合を定めることができる範囲などの情報を正確に把握する必要があります。離婚をお考えの方は、自分の年金についてどうなっているのか、年金事務所に事前に情報通知書を請求して下さい。

年金分割に関する詳細はこちらのブログをご覧ください。

まとめ

いかがでしたか?
離婚の基本的な知識といいましても実に多くの知識が必要です。また、離婚はそれぞれのご夫婦によって問題となることが異なりますので、基本知識だけでは対応できない場合も多くあります。
そして、離婚する状況はそれだけでも精神的負担が大きいです。
Utops法律事務所ではご夫婦それぞれに合った方針をご提案し、依頼者様が納得感あるかたちで解決するよう心がけておりますので、離婚をお考えの方はまずはご相談下さい。

  • 離婚手続の種類は主に協議離婚、調停離婚、裁判離婚
  • 協議離婚の際に離婚届で記載する事項は親権、養育費であるが、面会交流と養育費の他、財産分与、慰謝料などについても、離婚前に話し合うべき
  • 協議離婚であっても公正証書作成の必要性アリ
  • 協議離婚が成立しない場合は、調停の申立
  • 離婚にまつわる調停には夫婦関係調整調停(離婚)、婚姻費用分担請求調停、面会交流調停等がある
  • 裁判で離婚が成立するには法定の理由が必要
  • 離婚で問題となり得ることは①財産分与②慰謝料③親権・監護権④養育費⑤面会交流等
  • 離婚後の手続として名字の確定、年金分割を忘れずに!
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