養子縁組されたお子さまは【両親の離婚後】の戸籍はどうなるの?必要な手続きについても

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結婚と同時に相手の連れ子と養子縁組したものの、離婚に至るケースも少なくありません。離婚したら当然に連れ子との親子の縁も切れると思っていらっしゃいませんか。

結婚生活が続くことを前提に連れ子と養子縁組をしたため、離婚の際に養子縁組も解消したいと思われる方も多いでしょう。

反対に、自分の連れ子を相手の籍に入れたままにしておきたくないが、子供の名字はどうなるのか不安な方もいらっしゃるでしょう。

そこで今回は離婚の際の養子縁組解消について解説したいと思います。

離婚と養子縁組は別物!離縁されるものではない

結論として離婚と養子縁組は別物であり、離婚をしたからといって、養子縁組が当然に解消されるわけではありません。

離婚はあくまでも夫婦関係を解消する手続であって、親子関係を解消する手続ではないからです。つまり、離婚したとしても、養子縁組がなくなるわけではなく、親子関係は継続します。

親子関係に伴う扶養義務(養育費の支払い)、相続する権利など離婚によって失われるものではありませんので、離婚と同時に養子縁組についても検討する必要があります。

養子縁組を解消するには離縁手続が必要

養子縁組を解消するには離婚とは別に「離縁」という法定の手続が必要です。離縁手続には大きく分けて協議離縁、調停離縁、審判離縁、裁判離縁の4種類があります。

【協議離縁】話し合いから始めてみる

協議離縁とは、当事者の話し合いで養子縁組を解消することです。

当事者同士の話し合いで離縁することが決まれば、あとは養子離縁届を作成し、養親または養子の本籍地または住所地の市区町村役場に離縁届を提出することによって、離縁が成立します。

養親または養子の本籍地以外の市区町村役場に離縁届を提出する場合には、戸籍謄本(全部事項証明書)が必要になります。

協議離縁は最もスムーズに運ぶ場合の手続です。

【調停離縁】当事者だけの話し合いで解決できない時

当事者同士だけの話し合いでは離縁の合意が得られない場合には、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に離縁調停を申し立てる必要があります。

離縁調停は、離婚調停と同じように調停委員(裁判所から選任された一般市民)が当事者の間に入って離縁に向けた話し合いの仲介をしてくれます。

話し合いで解決するという意味では、調停離縁も協議離縁の一種ともいえます。

調停の結果、養子縁組の解消の合意が得られた場合には、調停が成立し、その旨の内容が調停調書に記載され、後日当事者に交付されます。

調停離縁をする場合でも市区町村役場への離縁届の提出が必要になりますので、家庭裁判所で調停調書の謄本の交付申請を行い、調停調書の謄本と一緒に離縁届(当事者一方の署名押印のある)を提出してください。

離縁届の提出は、調停成立の日から10日以内とされていますので、忘れずに提出するようにしましょう。

離婚調停と同時に離縁調停も起こす場合には、事件自体は別ですが、実際上は併合されるか、同時並行で話し合われることが多いです。ですので、離婚に際して離縁も望む場合には、離婚調停と同時に離縁調停も申し立てることを忘れないでください。

【審判離縁(調停に代わる審判)】調停が成立しない場合は裁判所の判断で

調停が不成立に終わった場合には離縁訴訟(裁判離縁)を申し立てるのが原則です。

しかし、調停が成立しない場合であっても、主な事項については合意に至っている場合や、一方の頑なな意思によって合意に至っていない場合には、例外的に裁判所の判断で調停に代わる審判を出すことがあります。

ただ、審判離縁に移行することは全体の1%ほどとごく僅かですので、参考程度におさえておけば大丈夫です。

【裁判離縁】最終手段

調停は、あくまでも話し合いの手続きですので離縁を強制することができません。当事者の一方が離縁を拒んでいるような場合には、調停が不成立となります。

このような場合には、家庭裁判所に離縁裁判を起こして、裁判所に離縁を判断してもらうことになります。訴えを提起する家庭裁判所は原則的には相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です。

裁判上離縁が成立するためには離婚の場合と同様に以下の法定の離縁事由があることが必要です。

離縁事由 民法814条1項

  • ①相手から悪意で遺棄されたとき
  • ②相手が3年以上生死不明であるとき
  • ③その他縁組を継続しがたい重大な事由があるとき

裁判離縁に発展するケースは、色々ありますが、離婚の際に養子縁組も解消したいと思われる方にとっては、離婚が③その他縁組を継続しがたい重大な事由といえるかが問題でしょう。

結論からいいますと、単に両親の離婚が離縁を継続しがたい重大な事由にあたるとは判断されません。

京都地裁判決昭和39年6月26日は、「本件養子縁組は、原告と牧夫間の婚姻生活の円満を目的としてなされたことが認められ、原告と牧夫間の婚姻は、前記認定のとおりの事情で、婚姻を継続し難い重大な事由があるときに該当するから、原告と孝秋、鈴子間の縁組も、縁組を継続し難い重大なる事由あるときに該当すると解するのが相当である。」として、離縁を認めました。

事例判決ですので、離婚する際に離縁が認められるかはケースバイケースです。

実際判決になりましたら、養子縁組した時の事情や理由、離婚することによって親子関係を維持することが難しいか等、家族の事情によって判断されることとなるでしょう。

また、離縁は裁判になる件数も少ないですし、裁判に至っても、裁判の中で和解による解決も多く、判決自体が少ないため、家族の事情に寄り添って訴訟を進めていく必要があります。

さて、裁判で離縁が認められた場合には、不服申し立てがなく判決受領後2週間が経過することによって判決が確定します。判決確定後に、確定の日から10日以内に裁判所から判決謄本と確定証明書の交付申請を行い、離縁届(当事者一方の署名押印のある)と一緒に市区町村役場に提出します。

子供が未成年の場合は誰を相手に離縁の話をするのか

これまで、「当事者」と言ってきましたが、養子縁組の場合原則的にはもちろん養親と養子がその「当事者」となります。

しかしながら、養子が15歳未満の場合は、養子に代わって、離縁後にその法定代理人となるべき者(代諾権者)が養子に代わって協議、調停、裁判手続を行います。養子が15歳になれば自ら当事者となって手続ができます。未成年(18歳未満)ではないことに注意が必要です。

離縁に際して金銭を請求された

離縁が成立すると親子関係が法律的に解消されます。そこで、養育費の問題は法律上もなくなりますが、離婚のように財産分与や慰謝料などは認められているのでしょうか。

離縁に際して財産分与を請求された

財産分与については法律上規定がありません。

離婚で財産分与が認められるのは、夫婦が共同で協力して財産を築いたからです。これに対し、養親子関係は夫婦関係ほど濃密なものではなく、養子が年少であることが多いため、養子が養親とともに財産形成に寄与することは想定できないからです。

ですので、離縁をするにあたって財産分与の心配をする必要はありません。

ただし、養子が家業を手伝っていた場合など財産形成に寄与していたような場合は、後でお話する慰謝料のなかで財産分与が加味されることもあります。

離縁に際して傷ついたとして慰謝料を請求された

離縁の際の慰謝料については、離婚と同じように有責な相手方に対し請求できることについては争いがありません。

裁判例も「離縁についても、縁組によって期待された合理的な親子関係が破綻したことによって精神的な苦痛を被った場合には、慰謝料請求権が発生する。」と判断しています。

なお、相続に対する期待を「期待権」として、期待権の侵害をもって慰謝料請求することはできないとされています。

慰謝料の額の算定は?

慰謝料の額ですが、一般的には離婚の慰謝料より低額とされています。

親子関係は夫婦関係より、親密度が希薄であることが多いため、縁組解消に伴う精神的苦痛の程度も一般的に低く評価されるためです。

もっとも、慰謝料の額は事案にそって算定されるため、離婚と同程度のもしくはそれ以上の精神的苦痛を伴う場合には離婚と同様、それ以上の額が算定される可能性もあります。

慰謝料の考慮要素としては、養親子関係の破綻の原因、有責割合、縁組の期間、双方の収入、資産、年齢などが重視されます。

離婚の際の離縁、特に養子が15歳未満である場合では、離婚の財産分与や慰謝料に離縁の慰謝料も考慮されて解決されるケースが多いです。

離縁したら名字は変わるの?

離婚と離縁に際しては、今後名乗る名字についても不安に思う方がいらっしゃるかもしれません。
「自分は旧姓を名乗りたいけれど、子供は学校関係もあるから婚姻時の名字を名乗らせたい。」
「自分も子供も婚姻時の名字を名乗っていきたい。」
など、名字の変更は生活に直結しますので大きな問題ですね。

離婚の当事者に関しては旧姓に戻るのが原則ですが、届出をすれば、婚姻時の名字を続用することもできることは一般的に知られています。

養子については、どうでしょうか。結論としては、離縁した場合にも縁組する前の戸籍、名字に戻るのが原則です。もっとも、例外もありますので、具体的な例で見ていきましょう。

田中A子さんが鈴木Bさんと結婚し、自分の連れ子佐藤(前夫の姓)C子ちゃんが鈴木Bさんと養子縁組をし、鈴木A子さん、鈴木C子ちゃんとなった家族の例です。

その後、鈴木夫妻が離婚し、離婚に伴い鈴木BさんとC子ちゃんが離縁することになりました。なお、養子が結婚していると複雑になりますので、C子ちゃんが結婚していないケースです。

C子ちゃんは離縁しますと、前の戸籍、つまりはA子さんの前夫の戸籍に戻り、鈴木C子ちゃんから佐藤C子ちゃんに戻るのが原則です。離婚の際も旧姓に戻るのが原則ですから、A子さんは田中姓に戻ります。

一方、A子さんが離婚しても鈴木姓を選択し、戸籍を新しく作った場合には、C子ちゃんもA子さんと同じ戸籍に入り、鈴木C子ちゃんを名乗ることができます。ただし、この場合、家庭裁判所に子の氏の変更許可の申立てをする必要があります。

順番としては、A子さんが離婚して戸籍を新しく作り、家庭裁判所の子の氏の変更許可をもらって、C子ちゃんを自身の戸籍に入籍させてから、C子ちゃんとBさんの離縁をすることになるでしょう。

また、C子ちゃんもA子さんの旧姓の田中を名乗りたい場合には、前の例と同じく、家庭裁判所に子の氏の変更許可の申立てをすれば可能です。

次に、鈴木A子さんが離婚によって田中A子さんに戻った際にも、離縁したC子ちゃんは鈴木姓を名乗り続けられるのでしょうか。お子さまの学校の都合上こうした要望もあるかと思います。

養子縁組から7年が経過し、離縁から3ヶ月以内に届け出れば、C子ちゃんは単独で鈴木姓を名乗り続けることができます。名字を変えたくない場合は、忘れずに離縁届と同時に「離縁の際に称していた氏を称する届」をしておきましょう。

離婚・離縁の相談はUtops法律事務所へ

養子縁組は簡単に解消できるわけではありません。また、離縁する際には慰謝料請求等を受ける可能性もあります。人生何が起こるか分かりませんので、養子縁組をする際には十分な検討が必要といえるでしょう。

また、離縁によって生活にとって重要な姓が変わる可能性もありますので、離婚後、離縁後、どの姓を名乗っていきたいのか、離縁手続と並行して考える必要があります。

特に離婚と離縁が同時に行われる場合は複雑です。養子縁組については、件数も少なく判例すらあまりない分野ですので、これまで離縁調停や養子縁組の無効訴訟なども取り扱ったことがありますUtops法律事務所へご相談ください。

まとめ

  • 離婚と離縁は全く別の手続。
  • 離縁には大きく分けて協議離縁、調停離縁、審判離縁、裁判離縁の4種類がある。
  • 裁判離縁が成立するためには、法定の離縁事由が必要。
  • 離婚のみで離縁事由があると必ずしも判断されない。
  • 離縁の際に金銭請求される可能性もある。
  • 離縁すると養子縁組前の名字に戻るのが原則。

もっとも、一定の場合には一定の手続を踏んで養子縁組時の名字を名乗ることができるため、離縁前に検討する必要がある。 この記事が離婚と同時にお子さまの離縁も検討されている方のお役に立つことができれば幸いです

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